クチコミを味方につける企業、恐れる企業〜インフルエンサーを探すことから始めよう

■ある大物ブロガーの変節

7/1"Symbian-Guru.com"というブログが終了した。

【図 symbian-Guru.com】
このブログは4年近くにわたりRicky Cadden氏が運営してきたものだ。自身シンビアン携帯端末のヘビーユーザであり、ブログのタイトル通り「シンビアンのグル」と呼ばれていた。携帯関係の記事を多く執筆しており、その発言に注目している読者も多い。ソーシャルメディアを通じて広くメッセージを伝搬(バイラル)させる力を持つインフルエンサーだ。
Ricku Cadden氏は、これまでシンビアンOSを採用するノキア社が提供する携帯端末が関心の対象であった。しかし、今はandroid携帯に移ってしまった。ブログでは、関心が変わった理由が「ノキア社とシンビアン社の取り組み姿勢に絶望したことである」旨を伝えている。これまで「好感の持てるバイラル」を生み出していた氏が、一気に「ブランドを否定する」バイラルを生み出すに至ってしまった。ノキアにとってもダメージが大きい。翌日には、ノキアのオフィシャルブログに副社長Anssi Vanjoki氏が、Ricky氏を初めとしたサポータに戻ってきてもらうように努力するとのコメントを掲載している。世界で最も多くの携帯電話を販売しているノキアも、一人のブロガーの行動に注意と敬意を払っている。厄介だけど、頼りになるインフルエンサーとどのような関係を保てばいいだろうか?
先ずは、対象となるインフルエンサーを見つけることが必要だ。

インフルエンサーの見つけ方

あなたの関与する会社・商品のインフルエンサーはどうやって探せばいいだろうか?
有名な企業・ブランドであれば「シンビアンのグル」のような存在を探さなくても、メディアが取り上げてくれるだろう。今時有名でない企業でも、コストや時間をかけずに見つけるツールがネット上に溢れている。googleでもブログ検索が利用出来る。一例としてTopsy(http://topsy.com/)をインフルエンサーを見つける例を紹介しよう。
tospyでブランド名で検索する。すると、該当する内容を含むページのURLごとにツイッターでバイラルされた件数が表示される。
例えば、図はtopsyで当社のがslideshareで公開している資料「Socialmediaの今を一時間で理解する」のURLをツイッターでツイートした人々の一覧だ。

【図 Topsyによる「Socialmediaの今を一時間で理解する」ページをツイートした一覧】
どのような見解を持ちながらツイートされたのか一覧で把握できる。また中には"Highly Influential"というマークが付いている人がいる。この人のアカウントのフォローワーは10万人に迫るレベルだ。topsyのブログページには、"Highly Influential"と記したアカウントの定義について以下のような説明をしている。

Highly Influential:roughly the top 0.2% most influential of all Twitter users
Influential: tags appear for the top 0.5% most influential Twitter users

計算方法は、過去からのリツイートと文章の内容を参考にしているらしいが、明確な計算式は見当たらなかった。何れにせよ、彼が関心を持ちリツイートしてくれれば、大勢の人がこの資料を目にすることになるだろう。

インフルエンサーを活用する企業

ヴァージンアメリカ航空は、インフルエンサーの伝搬力評価サービスを提供するKlout社(http://klout.com/)とタイアップキャンペーンを始めた。

【図 バージンアメリカ航空のインフルエンサー対象キャンペーン】
キャンペーンの内容は、
・新たに就航するトロント⇔サンフランシスコ間の飛行機代を無料にする。
wi-fiも使い放題
・就航記念イベントへの招待

というものだ。更に、図にあるような快適な座席も用意される。
【図 キャンペーンで使用する機内の様子】

対象はツイッターアカウントを持ち、そのアカウントがKloutの評価するインフルエンサー伝搬力評価で一定のスコアをもっていることが求められる。キャンペーンサイトでは、基準は明確ではない。適性があるか評価するボタンを押すと、ツイッターアカウントでサインインすることを求められ、後に適性があればメールで連絡が来るとのことだ。スコアだけでなく、ツイート内容やプロフィールなどもチェックされるのだろう。Mashableの記事(http://mashable.com/2010/06/21/virgin-america-klout-influencers/)では、Klout Scoreが42の女性に招待状が着た例が紹介されている。彼女のフォロワー数は3千件、ツイート数は2万件を超える。試しに、Klout Scoreを求めてみると63となった。(Klout Scoreについては次回紹介する。)

【図 Klout Score】
無料の飛行機に乗ってインフルエンサーは何をすればいいのだろうか?何もしなくていいらしい。フライトの際にサンプル商品を手渡されるので、気が向いたらその商品について話してもらいたいということが、唯一のリクエストだ。あくまで要望であり、責務を求めるものでもない。キャンペーンページには「ツイートを買収するつもりはない」と明示までされている。
そうはいっても、インフルエンサーにとっては、タダで快適な旅行中に触れる特別な商品だ。好意的な発言をしてもらえれば企業にとっては、絶好的なプロモーションになるだろう。ネガティブな意見があっても、対象(インフルエンサー)が限定されているので、通常よりは迅速な対応が可能だろう。バイラルを生み出す確率を高めるには、効果的な手法だ。