企業twitterアカウントの整理法〜AT&Tの取り組み

twinaviに登録されているtwinavi公認企業アカウントは3,500件を超える。今回は企業アカウントについて考えてみたい。例えば、twitterの活用成功例としてよく取り上げられる「豚組は、@butagumi@hitoshiの2つのtwitterアカウントを使っている。オーナーの中村仁社長によると@butagumiは「表玄関」@hitoshiは「勝手口」と区別しているとのこと。なるほど、タイムラインを見ると@butagumiでは予約の確認、お礼のツイートが流れている。一方、@hitoshiでは、個人的なツイートやお知り合い達との対話が繰り広げられている。@butagumiに比べて、フランクなツートが多いように感じる。
 たったひとりで2つのアカウントを活用する豚組と対照的なのが、米国家電量販店ベストバイだ。顧客対話用の@twelpforceは2,100人でひとつのアカウントを運用している。「ベストバイの Twitter 活用術〜従業員2,100人が、たった1つのアカウントで生活者と対話する」に当アカウントの詳細説明があるので参考にされたい。これ以外の公式アカウントとしては、@bestbuyがある。アカウントの使われ方をチェックすると、@twelpforceでは対話ツイートが大部分を占めるのに対して、@bestbuyでは"RT(リツイート)"が殆だ。主として対話用には@twelpforce、情報配信用には@bestbuyと使い方がなされている。利用者からすると、対話用は@twelpforce一つと分かっていれば、迷うこともなく疑問を投げかけることができるだろう。製品の情報が知りたい人は迷うことなく@bestbuyをフォローするだろう。
逆にアカウントを細分化する企業も有る。米国の通信キャリア大手AT&Tはホームページ内に、ソーシャルメディアのアカウント一覧ページを用意している。

【図】ATTのコミュニケーション・インタフェース
インタフェースの内訳は、
ツイッターアカウント:11件(うち1つはデッドリンク
facebook FanPage:5件
Flickr グループページ:3件
youtubeチャネル:4件
・ブログサイト:4件
ATTのソーシャルメディア活用の特徴としては、ツイッターアカウントとFacebookファンページやブログを連携させて運用していることがあげられる。タイムラインを通り過ぎて消失するフロー型のツイッターに対して、ブログなどの蓄積型のメディアを組み合わせることで、届けたい人にリーチできる環境を用意している。広報アカウント@shareATTでは、FacebookyoutubeFlickrに同じ名前の企業ページを用意している。

アクティブなtwitterアカウント10件についてtwanalyst.comで分析してみた。

【図】ATTの公式ツイッターアカウント別の分析内容
・事業分野による分類
 @ATTNews:全社のニュース配信
 @ATTdeals:モバイルサービス向けニュース配信
 @BizSolutionsエンタープライズ向け情報提供
 @SmallBizInSite スモールビジネス向け情報提供

@ATTNewsと@ATTdealsは、ATTのPRアカウントになっている。ATTホームページへの誘導リンクが必ず含まれている。対話は一切ない。
一方、@BizSolutionsと@SmallBizInSiteの2つのアカウントは、他メディアを含めた関連ニュースや自社セミナーの案内などをリンクとリツイートで配信している。

・業務分野による分類
 @ShareATT:広報
 @ATTCustomerCare:カスタマーサポート
@ATTJOBS:採用

広報アカウント@ShareATTの「自己紹介」には、
Official Twitter source for AT&T announcements, product updates, sponsorship news & more.
とある。実際のツイートを見てみると、カスタマーサポート(@ATTCustomerCare)への誘導ツイートが相当数に上る。特に、カスタマーサポートアカウントへの告知媒体としての役割も担っているようだ。
 カスタマーサポート(@ATTCustomerCare)では、Molly氏が「実名・顔見せ」で応対にあたる。「実名・顔みせ」は彼女だけではない。アカウントで公開されているリスト@ATTCustomerCare/teamには、19名のカスタマーサポートメンバーの個人アカウントも掲載されている。

【図】リスト@ATTCustomerCare/teamのメンバー
アカウント名の先頭には[ATT}で実名が後に続くというネーミングルールも統一されている。ツイートの中身をみてみると
「Can I help you with something? I'm with AT&T, please DM me if you need assistance.」といった内容が多数確認できる。「困っている人を積極的に探して、サポートする」ことに利用しているアカウントだ。また、全てのメンバーがDMでのやり取りに誘導しているので、運用ルールも浸透しているようだ。もちろん、プライベートな内容は一切ない。仕事にのみ使っている。

・独立ブランド、イベントによる分類
 @ATTGolf:「Masters」,「AT&T Pebble Beach National Pro-Am」,「 AT&T National」の3大会のハイライトをツイート。ゴルフ大会が開催されている時期のみの利用。
 @buzzdotcom:ATTの運営するコミュニティサイトのアカウント
 @YPmobile:携帯用イエローページのアカウント

 @YPmobileでは、レストラン等を探している人を見つけては、勝手に付近のレストランを紹介している。もちろん、YPmoblieの該当レストランのURLも挿入している。いわゆる「アクティブサポート」を実践している。

 このように、ATTのアカウントは、それぞれ目的・運営ポリシーが、はっきりしている。しかし、当初から一貫性のあるアカウント運営をしていたわけではない。最初に作成したアカウントは、@SmallBizInSite。すでに2年半が経過する。おそらく現場部門が自発的に運営を開始したのだろう。それから徐々に他の事業分野の配信系アカウントの運用が開始されている。機微な対話スキルが、組織的に求められるカスタマーサポートへの導入は昨年の8月だ。時間をかけながら対応可能なチームを育成してきた様子が伺える。

企業アカウントの利用者はあくまで顧客や生活者である。彼らへのリーチが目的であれば、彼らの立場に立って考えなければならない。ブランドが確立した商品・サービスがあれば、専用のアカウントを用意したほうが、生活者はコンタクトしやすいだろう。一方問い合わせは、アカウントを一本化した方が生活者が迷うこともなくなるだろう。対応の効率性等を思慮すると、運用側の都合(企業側の論理)を優先したくなるが、生活者目線を忘れないよう注意したい。