インフルエンサー評価のスタンダード〜Klout Scoreってなに?

HootSuiteでは、ツイート左のサムネイルをクリックすると、そのアカウントのプロフィールをチェックできる。

【図 HootSuiteでプロフィールをチェック】
フォロワー数、フォローイング数、更新回数の下に[Klout]という表示が確認できる。
Klout Scoreは、「オンラインでのインフルエンス力の計測指標 」だ。つまり、この数字が大きければオンライン上での「インフルエンス力」がより大きいアカウントであることを意味する。前稿「クチコミを味方につける企業、恐れる企業―インフルエンサーを探すことから始めよう」で紹介したとおり、バージンアメリカ航空がタイアップ・キャンペーンも展開している。この他にもcotweetを初め、450を超えるパートナーがKloutのAPIを活用している。
 対象はtwitterアカウントに限定されるが、 現在、最も広く用いられているインフルエンス力の評価指標ではないだろうか? フォロワー数が多ければ、きっとKlout Scoreも大きくなるだろう。現在フォロワー数世界一のアカウントは、ブリトニー・スピアーズだ。その数は540万人を超える。Klout Scoreを調べると"80"とでた。
約50万人のフォロワーをもつ孫正義@masasonは"86"、フォロワー数は7万人のコカコーラ@cocacolaは"91"だ。当然だが、単純なフォロワー数から求められているものではないことが分かる。

【図 コカコーラのKlout Score】
では、どのような考えでスコアを求めているのだろうか?図にあるとおり、以下の(1)-(3)の3つの評価指標が元になっている。これらを求めるのに、25種類を超えるパラメータを活用しているらしい。ナビゲーションバーから"Score Analysis"というタグをクリックして遷移するページで、其々評価指標の主な中間値(各4種類)が確認できる。
(1)True Reach(フォロワーとの意味のある対話ができているか?)
・主なパラメータ
フォロワー数
親密なフォロワー数
フォロワーの@リプライ率
フォロワーのリツイート
これ以外に"リスト数"等の情報も使用している。

(2)Amplification Probability(バイラルが起きているか?)
・主なパラメータ
総ツイート数
@ツイート数(対話数)
リツイートされたメッセージ数
発信ツイート/受信ツイート
 これ以外に"フォロワーのツイート数"等の情報も使用しいてる。

(3)Network Influence(影響力のあるフォロワーを擁しているか?)
・主なパラメータ
フォロワー数/フォロー数
フォロー返し率
ユニーク@ツイート者数
ユニークリツイート者数
これ以外に"フォロワーのインフルエンス力"等の情報も使用している。

その内容をまとめたものが以下の図だ。使用しているパラメータ名は部分的に紹介されているが、具体的な計算式は明示されていない。このため、計算結果と入力パラメータの正確な関係は裏付けられなかった。

前出の@cocacola,@masason,@BRITNEYPEARSの3つのアカウントで具体的な数値をみてみよう。

【図 @cocacola,@masason,@BRITNEYPEARSKlout Scoreの計算指標】
(1)True Reachでは、@cokacolaが唯一得点が付いている。これに対して@masasonと@BRITNEYPEARSは、"NA"だ。この差は「親密なフォロワー数」、「フォロワーの@リプライ率」、「フォロワーのリツイート率」にある。例えば「親密なフォロワー数」を見てみよう。解説文章から推測すると、以下のような関係は「親密なフォロワー」ではないと評価しているようだ。
・たくさんのフォロワーがいて、直接交流をしていない人同士
・共通のフォロワーが少ない人同士
つまり、同じフォロワー数でも、フォロワー集団の種類・属性によって、結果が大きく異なることになる。また@cocacolaのツイートを確認すると、ほぼ全てが対話ツイートだ。「フォロワーの@リプライ率」が高いのも頷ける。しかし、@BRITNEYPEARSも@masasonも、一方的なツイートだけでなく対話ツイートも結構ある。しかし、@cocacolaが冒頭に”@”から始まるツイートばかりであるのに対して、その他の2アカウントの対話ツイートは単純に"@"から始まる形式ではない。@BRITNEYPEARSでは「コメント+(from @XXXX)」や@masasonでは「コメント+"RT"+アカウント名」といった記述をしている。このため、対話ツイート(通常"@+アカウント名"から始まる)とみなされていないと思われる。このあたりを配慮するとここまで大きな差異は生じないように思われる。
(2)Amplification Probabiilityを見てみると、対話ツイート数の多さが効いているようだ。それ以外の項目は全て@BRITNEYPEARSが群を抜いているのに@cokacolaのほうが高スコアになっている。項目以外にも、@cokacolaのリツイート数/総ツイート数は実に6割を超える。この割合は、実質的に読者に価値あるツイートをより効果的に広めている指標にもなるだろう。
(3)Networkでは、フォロー返し率、ユニーク@ツイート者数で@cocacolaが圧倒的だ。
確かに、@cocacolaはフォロワー数とフォロー数が他の2アカウントに比べて拮抗している。フォロー返し率と記載したパラメータは英語表記は[follow back]だが、100%超える値も存在するので、単純な割合ではないようだ。また、ユニーク@ツイート者数、ユニークリツイート者数は、ネットワークの広がりを測るにはよいパラメータだ。

@cocacolaは積極的に、多くの人と対話しているアカウントだ。多忙な有名人が運営する他の2アカウントよりも組織的に、きめ細かく対応できている。高スコアになることは合理的だ。一方、明確な計算式が提示されていないため、検証してゆくと釈然としない部分も少なくない。いずれにせよ、評価軸の定義は効果測定指標の策定には参考になるのではないだろうか?また、KloutではInfluence Mtrixという、アカウントの性格を16種類の類型化も試みている。
・発言数が多い「参加型傾向」か少ない「傾聴型傾向」
・発信内容が「クリエイティブ型(独自の発言が多い)傾向」か「共有型(他の人の発言やURLが多い)傾向」
・交流が特定の人に「限定される傾向」か「幅広く漂流する傾向」
・発言内容が「厳格な言い回し」か「やわらかい言い回しか」

といった特徴により類型化している。

【図 Influence Matrix】

発信者やフォロワーのキャラクター(性格)により、多様なバリエーションが存在する。インフルエンス力は、単純な数値(スカラー)で一元的に評価できるものではなく、指向性をもつベクトル情報として考えるべきだ。