Twitterの「なりすまし」アカウントに立ち向かう4つの習慣

■国会議員の「なりすまし」
 5月31日ツイッター民主党参議院議員16名の「なりすまし」アカウントの存在が明らかになったとの報道があった。アカウント開設は4月1日なので2ヶ月間運用されていることになる。現在も、すくとも一部のアカウントは確認できる。ツイート内容は、
「私ども若手議員で、「twitterを活用する」議連を発足しました。2010年度から始動していきたいと思います。皆さまのご支援・ご協力を賜りたい所存です。」
「友愛!友愛!」
といった内容で、10件前後のツイートがなされている。フォローワーが100人近いアカウントも有る。ニュースになってからは「謝罪」のツイートが並んでいる。選挙を前に議員の方々は相当に困惑されていることだろう。このようなことが起きると、ネット選挙が解禁されるなか、twitterが見送られたことも妥当な判断だろう。twitterアカウントのなりすまし行為は、政治家のみならず、著名人やスポーツ選手など大勢の被害者を生み出している。

■BP社の場合
有名人だけの問題ではない。企業アカウントにも「なりすまし」も起きている。英国の大手石油会社BPの例を紹介しよう。
現在、BP社は4月20日に発生した「メキシコ湾沖の原油流出事故」の対応に忙殺れている。彼らのオフィシャルtwitterアカウント@BP_Americaでは、懸命に問題に立ち向かっている状況が、刻々とツイートされている。フォローワー数は8,584人。ツイート数は334件だ。

【図_BP社の正式なtwitterアカウント:@BP_America】
「なりすまし」アカウントは@BPGlobalPR。アカウントが開設されたのは5月10日と日が浅いにも関わらず、フォローワー数は92,934人とオフィシャルアカウントの実に10倍を超える。

【図_BP社の「なりすまし」twitterアカウント:@BPGlobalPR】

ツイート内容は、
「ゼリー豆、ジェットコースター、ピザとトランポリン。これらは、石油がなければ存在しない」
原油が流出した衛星画像をみた。流出したその形状は、美しい」

といった、ユーモアー溢れる不謹慎な内容だ。プロフィールのリンクをクリックすると、Tシャツのコマースサイトにたどり着く。商品数は少ないが、「なりすまし」ツイッターアカウントのゴロ入りのTシャツが25ドルで購入できるようだ。アカウント名も"BPGlobalPR"と尤もらしい。この大惨事をネタに一儲けを企てているようだ。
これに対して、BP広報担当Toby Odone氏は「(そのアカウントで)どのような発言がなされているか気にかけていない。何人にも、今回の事故について自らの意見を述べる権利がある。我々にできることは、問題を解決するためにベストをつくすことだけだ」と語っている(http://adage.com/article?article_id=144062)。要するにBP社は、この「なりすましアカウント」には放置するポリシーを決定している。記事に投稿されたコメントには、「素晴らしい対応」と評価するものも多い。

【BP_America と BPGlobalPR のフォローワー数推移】
しかし、この記事が紹介されたのは5/24以降フォローワー数が急増していることを考えると、少なくともメディアが取り上げた後の対応は、適切なのか疑問もある。注目を集めたTシャツを売りたい(なりすましアカウントを開設した)業者は、大成功と喜んでいるかもしない。
「なりすまし」は、上のような確信犯だけではない。利用者に錯誤を与えることも珍しくない。

スターバックスの場合
全世界にチェーン店展開を進めるスターバックスの例をみてみよう。
"starbucks"あるいは"SBX"等のスターバックスを連想させる単語を含むtwitterアカウントは160件を超える。企業になりかわって発言しているわけではないので、「なりすまし」ではないが、利用する人は混乱することは必至だ。図はtwitterのアカウント検索窓で"starbucks"で検索した結果のアカウント一覧だ。

【図_スターバックスを連想させるtwitterアカウント一覧】
認証アカウント、各国の独自アカウント、ファン開設のアカウントなどが確認できる。この他にも、
・特定の店舗が解説したアカウント
・従業員・労働組合が開設したアカウント
・ファンが開設したアカウント
・パロディー(ふざけた)アカウント

といったものがある。ファンが熱心にお店を紹介してくれるのは、企業からすると有り難いPR活動だろう。反面、"@StarbucksCafe"や"@StarbucksGlobal"など、如何にも公式アカウントのような名前もある。ロゴも本物と同じものを使っているので、内容を読まないとスターバックスが運営しているアカウントか否か分からない。
スターバックスの事例から学ぶ、写真撮影ポリシーの作り方」では、スターバックス店舗内で写真撮影を許可するか否かの論争を発端として、スターバックスFlickrサイトが閉鎖された事例を紹介したが、まさにお店で女性の写真の撮影して投稿するサイトのアカウント@womenofsbuxも確認できた。@starbucks_girlといった内容のない「ふざけた」アカウントも有る。

■パロディ、コメンタリー、ファンアカウントのガイドライン
twitter社は、そのアカウントが「なりすまし」など錯誤を招きやすいと認定すれば、申請があれば変更を依頼したり、アカウントを抹消する措置をとるとしている。ヘルプページで、その基準も提示している。

(以下、ヘルプ内の本文再掲)
・ユーザー名:ユーザー名は、パロディやコメンタリー、ファンアカウントの対象と同じ名称にはしないようにします。分かりやすくするため、「not」「fake」「fan」などの語句を入れ、区別するようにします。

・名前:プロフィールの名前も、対象の名称と同一にしないようにします。「not」「fake」「fan」など区別するための語句を入れるようにします。

・自己紹介:自己紹介は、実際の属性と区別するため、「パロディです。」「ファンページです。」「パロディアカウント」「ファンアカウント」「○○とは無関係です。」などの記述を入れるようにします。

・他のユーザーとのコミュニケーション:公開、非公開を問わず他のユーザーとのコミュニケーションを通して、その属性について他のユーザーを欺いたり、混乱を招こうとしてはいけません。例えば、ファンアカウントを運営している場合は、まるで自分が本人(人、バンド、スポーツチームなど)であるかのようにダイレクトメッセージを送ったりしないようにします。

twitter社に問題を指摘して、10日程度で解決できた事例もある。

■企業として対抗できる4つの習慣
現状、アカウントを作成は阻止できない。しかし、次のような対応ならば、企業努力で推進できる。

習慣1 インタフェース一覧として、企業の公式アカウントをホームページに掲載する。
習慣2 オフィシャルアカウントについては、ネーミングルールやロゴを統一する。
習慣3 目に余る「なりすまし」、「錯誤を招く」アカウントについては、twitter社に削除要請する。

また、問題を早期に察知し、すみやかに対策を講じるためにはいち早く「気づく」ことが必要だ。先ずは、企業について語られていることを定期的に拝聴すること(習慣4)から始めたい。