「あっちゃん(オリエンタルラジオ)に学ぶツイッター運営ポリシーの作り方」

ゴールデンウイーク最終日、芸人中田敦彦さん(オリエンタルラジオ)のブログがちょっとした騒ぎになった。発端は、NHK-FMの「今日は一日”帰ってきたアニソン”三昧」(2010年5月5日(水・祝)午前9:20?翌午前1:00放送)という長時間番組内で繰り広げられた、中田さんのヱヴァンゲリヲンに対する熱い思いを語ったトークだ。長すぎたようだ。リスナーはアニソン(アニメソング)を聞きたいがために番組を聞いている。長いトークに苛立ったアニソンファンが2chや中田さんのブログで不満をぶちまけた。
中田さんのブログでは、

5/5 15:28「アニソン三昧で喋りすぎです
トーク番組じゃないんですよ?
エヴァの話とかどうでもいいわ」

といった投稿は始まり、現在587件のコメントが付いている。ブログは図のようであるから、内容とは全く関係ない。

【図 中田敦彦さん(オリエンタルラジオ)のブログ】
そのコメントは削除されることもなく、今も確認できる。その後のコメント件数の推移をグラフにまとめた。

【コメント件数の推移】
グラフでは、コメントを私の主観で、以下の3種類に分析・類型化した。

ポジ:中田さんに好意的な発言、クレームを投稿する人たちをたしなめる発言
ネガ:中田さんに批判的な発言。
無関係:上記の何れともとれない発言。

図のように、おおよそ一時間後には沈静化している。恐らく番組放送を聞いていた人がリアルタイムに苛立をコメントを書き込んだことが見て取れる。
18:12 中田さんは、ツイッター公式アカウントから本件に関する心境をツイートしている。

ツイッターからのツイート】
謝罪をしながら、自らの立場も主張している。内容を読む限り、長いトークは番組からの要請に従っただけのことのようだ。グラフは対応の適切さを物語る。同時刻、10件近い「ポジ」発言が投稿されている。これを炎上中にツイートしていたら、火に油を注ぐ結果になっただろう。沈静化してからのタイミングが効を奏し、ツイートに反応したブログのコメントも好意的だ。実際のコメントも「ツイッター見た」「かっこいい」といったツイートを評価する内容だ。

5/10のブログには、"FAQ"題して、ツイッターの運用ポリシーを投稿している。質問にあったものを頻度の多い順にまとめたものだそうだが、よく出来ている。コミュニケーションマネージャの方には大いに参考になると思う。主だった内容をピックアップして紹介したい。

【図】ツイッターFAQ

(括弧内は原文の再掲)
・本人がツイートしていることを表明
(本人ですか → 本人です。 picolkun=中田敦彦です。)
・アカウント名の経緯(アカウント名のpicolkunとはどういう意味ですか → 「ピコル君の小さな冒険記」の主人公の名前です。)
・フォロー返し方針
(フォローしてください → こちらをフォローしていただいた方には自動でフォロー返しをします。ただ、システム上フォロー数に上限がありますのですぐにはできない可能性があります。気長にお待ちください。)
・フォロー受付方針
(フォローしてもいいですか → 大歓迎です)
・リムーブを気にしないことの宣言
(リムーブしてもいいですか → ご自由にどうぞ。)
ツイッターの利用目的
(picolkunをフォローしていないのにフォローされましたが何故ですか → 僕はtwitterの使用について実験というか模索をしておりまして、自分の中で思うところあり、いろんな人を理由もなくフォローしています。怯える必要も喜ぶ必要もありません)
・リムーブするケースの説明
(フォローされていたのにリムーブされていますが何か問題がありましたか → リムーブについては、実験の途中段階での行動でそうなりましたが、そこにも意味はありませんので悪しからず。現在の方針ではフォロワー全員フォロー返しを目指していますのでそのうち再フォローされます。お待ちください。)
・DMは歓迎しないことの表明
(DM(ダイレクトメール)を送ってもいいですか → 基本的には、送らないでください。仕事上やプライベートで付き合いのある方からの緊急的もしくは一時的連絡方法として使っていきますので、それ以外の方は基本的にメッセージは@picolkunでリプライとして送信してください。その基本方針に反してDMを送ってきた方に関しては申し訳ありませんがスルーさせていただきます。一方的に何度もDMを送信してくる方に関しては、最悪の場合、ブロックさせていただく可能性もあります。)・ツイート内容の傾向(出演情報をおしえてください → レギュラー情報についてはブログの過去記事参照(2010年5月 1日 の「纏」という記事)お願いします。その他の単発の出演に関しては収録時につぶやいていきます。)
・ツイート内容の傾向
(「OO収録!」とつぶやきがありましが放送日時を教えてください → 時間があればわかる範囲でお知らせしますが、こちらもいろいろと混乱をきたしていますので、ご興味がわきましたら何卒ご自身で御調べいただければと思います。)
ツイッターを活用したイベントの紹介
( 塗り絵選手権とはなんですか → 月に一回程度、twitter上に投稿した僕のイラストに、他の人が色を塗って送り返されたものの中から優勝作品を含む優秀作品10作品を発表するプチtwitterイベントです。)
ツイッターを活用したイベントの紹介。ハッシュタグもときどき活用することの紹介
(塗り絵選手権の絵の送り方が分かりません → @picolkun宛てに画像付きリプライとしてつぶやけばOKです。(ハッシュタグはそのときどきで))
ツイッターを活用したイベントの紹介。参加インセンティブの紹介
(塗り絵選手権に優勝したご褒美はなんですか → 作品をマンスリーよしもと「芸人前夜」(僕の連載ページ)の挿絵として掲載。その際に優勝者の名前(アカウント名)も掲載。さらにブログでも作品と名前を掲載。名前については希望があれば変更も可です。)
そして最後には、
FAQで回答した基本方針は変更することもあります。その際はまた新たに改訂版をブログでアップしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。」と結んでいる。これだけ丁寧に利用者目線で説明がなされれば、ツイッターへの取り組み姿勢だけでなく、その人の理解も深まる。しかもブログで作成されているので、今後追加・修正がなされた場合も、経緯を含めて公開することができる。出来たら、ツイッターの利用目的を「思うところがあって」としている箇所を具体的に教えてもらいたいところだが、そこは芸人、手の内を明かせないこともあるのだろうか。
ブログのコメントにも、「基本方針了解!」「丁寧な説明ありがとうございました」など好意的な内容が並ぶ。ソーシャルメディアを積極的に活用しながら、着々とウッフィー※を溜めている。

※ウッフィー:ソーシャルネットワークで結ばれた人同士に長い時間かけて育まれる信頼,尊敬,評価の総称

yammer,SMARTS,chatter〜代表的な3つの社内ツイッターサービスを使ってみた。

ツイッターの手軽さはいいんだが、仕事で利用するには無理がある。」こんな話とともに、社内だけで使えるツイッターがないかとの相談が、最近多くなってきた。解決策の一つ「chatter」を開発したsalesforceのマーク・ベニオフCEOは

「なぜ、私はTwitterで、知らない人が映画に行ったことは知っているのに、部下が重要な客を訪問したかどうかを知らないのだろう」と思ったので、それを知るためのコミュニケーションツールとしてのchatterを開発した。

と語っている。私もツイッターのおかげで、何年もあっていないトライアスリートの友人が、毎日どんなトレーニングをしているか、かなり詳しく知っている。企業内でうまく活用できれば、社内の風通しはよくなるだろう。
ツイッターを企業内コミュニケーションで使用する場合には以下のような懸念がある。

・組織単位での情報統制ができない
ツイートの開示制御は、ダイレクトメッセージで特定の個人にのみ提供する場合以外は、全世界の利用者に公開されてしまう。要するに社員だけがアクセスできるツイートが単純にはできない。grouptweetを使えば、できなくはないが、事前にメーリングリストに対応するグループアカウントを新設したり、参加メンバーが相互フォローを設定しなければならないので、結構面倒だ。

・データをバックアップする仕組みが無い
APIを活用したサービスにTwttter Archiverはあるが、全てのツイートのバックアップを取れるわけではない。独自にいろいろ工夫するしかない。4月に米国議会図書館がサービス開始以来の公開ツイートを全て保存することになった(http://wiredvision.jp/news/201004/2010042122.html)。容量は実に167TB!もっとも研究目的にのみデータ提供をするということなので、気軽に「バックアップください」とお願いしても対応してくれそうにない。

SLAが設定されていない
 無料なので当然だろう。つまり必要なタイミングでシステム停止しても、クレームもいえない。また偏た使い方をすると、ツイッターの基準でアカウントが停止されることもある。

・ファイル添付は外部のサービスを利用するしかない
 写真ならばtwitpic(http://twitpic.com/)などが代表的な連携サービスだ。

・セキュリティー面で不安がある
 IP制限などのアクセス制限がかけられなかったり、APIを経由して様々なサービスと連携する場合、すべてのサービスベンダーが本当に信頼がおけるのだろうか?

といったことが、すぐさま列挙できる。このため、企業あるいは特定グループに限定したマイクロブログサービス(社内マイクロブログサービス)が注目を集めている。代表的なサービスを図にまとめた。

【図】社内マイクロブログサービスの比較表
特定の項目の特定条件での限定的な比較表だが、参考にしていただきたい。それそれの特徴と画面イメージを紹介しよう。

yammer
会社設立は、2008/9月。まだ1年半程度の社歴だが、利用実績は圧倒的だ。

【図】yammerの画面イメージ図
図はyammerのタイムラインの画面イメージだ。ツイートにコメントを追加出来る。ファイルの添付も可能だ。後述するchatterも同様だが、ツイッターというよりはfacebookに近い。
<特徴>
・実績が豊富なことは大きな安心材料だ。最近、意欲的に新機能をリリースしてきている。スマートフォン対応アプリも充実している。ライセンス販売を行う計画が2月にニュースになっているが、ホームページを見る限りでは表立って販売活動はしていなそうだ。また、ツイッターのツイートは140文字が上限だが、yammerは399文字までのツイートが可能だ。ツイートにファイル添付ができたり、"Like"ボタンで、ツイートを評価することも可能だ。
<課題>
・日本語対応が不十分。ツイートは日本語も可能だが、日本語のキーワードで検索すると、一部のツイートは出力されなかった。また、図でも確認できるように添付ファイルなどの日本語は文字化けする。また、ナビの文言も全て英語だ。

SMART
国内で432の組織での運営実績がある。サービス提供会社は株式会社モディファイ今回取り上げたサービスの中で、唯一国内で開発しているサービスだ。

【図】SMARTの画面イメージ図
図はSMARTのタイムラインの画面イメージだ。こちらは、ツイッターに近い。ツイートの上限もツイッターと同じく140文字だ。
<特徴>
・当然だが、日本語対応は万全。日本語のハッシュタグにも対応している。RSSフィードを取り込んでタイムラインに登録することもできる。Googleリーダーのような使い方も可能だ。ネット上の情報収集とメンバーのコミュニケーションをひとつのアプリケーションで利用できるのは便利だ。また、ソフトウエアライセンス提供やカストマイズ開発も可能なので、社内システム規約などでSaasなどのサービスが利用できない企業には導入しやすい。

<課題>
APIを公開していない。このため、外部ベンダーが補完的な機能を提供するようなサービス形態にはなっていない。また、国産サービスなので3キャリアの携帯ブラウザには対応して欲しいところだ。(図の通り、他のサービスも対応していない)

chatter
salesforceがβリリースを開始したサービスだ。
こちらも、yammer同様にfacebookに近いインタフェースだ。ツイートあたり140文字の制約もない。
<特徴>
・chatterは、企業向けクラウドコンピューてイングのプラットフォームであるforce.comの上で動作するため、他の社内マイクロブログサービス単体と単純に比較することは適当でない。しかし、salesforceの機能と連携することで、強力な社内マイクロブログサービスを実現しているので、紹介したい。最も特徴的なのはアカウント(つまり人)以外の情報をフォローできるところにある。例えば、salesforceで管理している「見込み案件」をフォローすることができる。「見込み案件」のステータスが変化すれば、その情報がタイムラインに現れる。上司に「あの商談どうなった」と毎日のように詰問されている営業マンには、大変ありがたい機能だ。図のように、ケースをテーマにツイートのタイムラインを表示させることもできる。

【図】chatterの画面イメージ図
また、salesforce for twitterというAppExchangeから無料で追加することができるアプリケーションを提供している。これを利用することで、ツイッターの情報を取り込んだり、ツイッターに配信したりできる。
<課題>
現時点ではβリリース。正式リリースが待たれる。ナビゲーションバー等も日本語対応しているが、日本人であれば違和感を感じる日本語も見受けられる。日本法人の方が、気付いた表記を、随時指摘・改善をしている途中だそうだ。

以上の特徴からすると、少なくとも
salesforceを導入している、あるいは導入予定である場合にはchatter
・社内にサーバを置いたり、カストマイズを施したい場合にはSMART
・利用者が様々なスマートフォンを利用する場合にはyammer

といったことは、はっきり言えそうだ。其々特徴のあるサービスであるので、記述し切れないのが正直なところだ。SMART,Yammerは無料バージョンが直ちに利用できる。chatterもβプログラムの利用申し込みを受け付けている。「百聞は一見にしかず」検討されている方は、是非おためしあれ。

フリーミアムモデルを棄てるNingの対話型プレスリリース

■Ningの決断
2010/4/15、Ningはこれまで無料で提供していたSNS提供サービスを有償化する発表した。日本ではあまり知られていないが、Ningを利用して作られたSNSは200万件を超える。米国を中心に学校などの教育機関非営利団体のコミュニティとして幅広く活用されている。Opensocialの推進でも中心的な役割を担っている。Ningのサービス詳細は「100万以上のコミュニティを抱える ning のアプリ戦略」に記事があるので参考にしていただきたい。
無料で利用する多数の利用者と、有料でプレミアムサービスを使用する少数(といっても数万社)の利用者が共存するフリーミアム・モデルだ。
決してサービスが活性化していないわけはない。Alexaでみてもトラフィック自体は堅調に推移している。

【図】Ningのトラフィック推移(Alexa)
今回の発表は、CEOの交代から1ヶ月のタイミングとの従業員を167名から98名に削減する同時発表している。今や、全世界で4億人を超える利用者を抱える「facebookのFan Page」でコミュニティで用意したい機能の大半は実現できる。「Googleグループ」でもそれなりのコミュニティは構築できる。いかに200万件ものSNSを抱えるNingでも、億単位のアカウントを持つgooglefacebook相手に同じ無料サービスでは、優位性を発揮できない。
日本国内でも、同様に無料でSNSを開設できるサービスを提供しているSonetSNSが2010/3/31をもってコミュニティの新規開設を停止した。6/3にはサービス自体を完全に終了させると発表している(http://www.so-net.ne.jp/sns/close/)。
このような状況であるので、NingがFan Pageに満足しないグループにターゲットを絞り、プライベートSNSを有償で提供するモデルに特化する意図はよくわかる。
また、無料サービス終了を伝えるCEOのブログには、
・既に数万ものプレミアムサービスを利用している会員がいること
・彼らが全体のトラフィックの75%を占めていること
が書かれている。
コストを落として有償サービスに踏みきれば、勝算があるとの思惑が伺える。

【図】CEO ローゼンタール(Jason Rosenthal)のブログ


■対話型プレスリリース
 無料サービス終了のプレスリリースは、ホームページのリリースページには掲載いされていない。オフィシャルブログで ローゼンタールCEOのメッセージが伝えられている。"An Update from Ning"タイトルの、記事がそれだ。ブログなので誰もがコメントを書き込める。寄せられたコメントは現時点で456件に及ぶ。Topsyで確認すると、ツイッターでも312件もツイートされている。おそらく、どのような表現でリリースしても、質問やクレームが押し寄せることは必至だ。ブログであれば、そのコメントと回答によりFAQをつくることもできる。
それほど多くないが、ブログの寄せられたコメントに、ローゼンタールCEOが返信している例も確認できる。facebookのFan Pegeでも告知され、対話がなされている。

【図】facebookのFan Pageでサービス終了の告知に寄せられたコメント
ツイッターの公式アカウントでも、多数の対話をしている。
アカウント宛のメッセージでなくても、今回の件について関心を寄せているユーザには、自発的に返信を試みている。それでも、いろいろな噂が広まった。このため、4/20にはオフィシャルブログでは、噂を払拭させるためのブログがポストされている。ポストしたのは、クリエータ(Ningの利用者)の支援担当副社長のジョンマクドナルド氏。以下のような内容だ。
噂その1 「プレミアムサービス(有償サービス)に移行しないコミュニティーは一切を5/4の発表をもって一切利用できなくなる」
(回答)そのようなことは、ありません。少なくとも10週間の移行措置をとります。5/4には料金体系の詳細をアナウンスする予定です。
噂その2 「新しい料金体系では、大規模なネットワークだけが優遇される」
(回答)そのようなことは、ありません。もちろん既存の有料サービスを利用されている方々にも喜んでいただける料金体系にする予定です。
噂その3 「今回の変更は、教師や非営利団体をサービスから締め出すことが目的だ」
(回答)そのようなことは、ありません。ずっと使い続けてもらえるように教師や非営利団体向けのオプションサービスを用意する予定です。
教師や非営利団体向けの優遇措置も配慮されることが予告され、既存利用者にとって不利になる料金体系を提案するつもりでないことが感じ取れる。
リエータがディスカッションできるコミュニティも用意されている。利用しているクリエータは12,000人。こちらでもローゼンタールCEOをはじめ経営陣のマイページが用意されている。クリエータ(Ningの利用者)の支援担当副社長のジョンマクドナルド氏が積極的にコミュニティに参加している。

【図】クリエータ向けコミュニティーサイト
ログイン・アカウントを持たない人にもオープンだ。クリエータと企業がどのような会話をしているかを誰もが確認できる。比較的、Ningの新しい施策に理解を示すコメントが多いように見受けられる。

このように、Ningは手を尽くして利用者と対話をしている。発展的な方針転換であるからこそ、しずかにサービスを切り替えるのではなく、積極的に顧客との対話に務めているのだ。その対話で得た「気づき」をもとに軌道修正したこともあるだろう。

しかし、twitterの世界でのネガティブ・ポジティブ評価ができるtweetfeelでみれば、75%ネガティブの意見だ。恐らく5/4の新サービスの料金体系発表までは、傾向は変わらないであろう。

【図】NINGの評判(ネガ・ポジ判定結果)

2009/1には、ポルノ禁止を打ち出して、一時的にはサービス利用者を失ったが、復活した実績もある。今回の方針転換がNingの存在感を高めることになるかもしれない。

まずは「貢献」ありき。「セルフ・ブランディング」を進めるcrowdspringのソーシャルメディア活用例

crowdspring(http://www.crowdspring.com/)は、ロゴ等のデザインを全世界のデザイナー(Crative)から提案を受けることのできるサイトだ。

【図】crowdspringのwebサイト
所謂、クラウドソーシング・サービスだ。クラウドソーシングサイト「crowdSPRING」利用体験記。300ドルで84件のロゴデザインを GET!(前編)(http://japan.internet.com/column/webtech/20090512/8.html)、「300ドルで84件のロゴデザインを Get!crowdSPRING を使ってみた。(後編)(http://japan.internet.com/column/webtech/20090526/8.html)」に詳細な説明があるので参考にされたい。
このサービスを過去に2度利用したことがあるが、全世界から集まる面白いロゴデザインに出会い、大変刺激を受けた。ロゴを決めるという目的もさることながら、途中のプロセスで提案されるデザインや、デザイナーとのコミュニケーションも楽しい。調査した当時から約1年が経過した状況だが、図のようにサービスは着実に成長しているようだ。デザイナー数は58,322と昨年の2倍に達している。また、プロジェクト毎の応募件数も60%程度の増えている。サービス自体が活性化している様子が伺える。

【図】crowdspringのサービス状況

crowdspringは、2008年創業時代からツイッターのアカウント@Crowdspring(http://twitter.com/Crowdspring)を用意している。

【図】@Crowdspring

following数9,398 follower数9,661 リスト数1,253 ツイート数9,290(2010/4/20現在)とかなり積極的に活用している。最近のツイート内容を分析してみた。follower数とfollowing数が拮抗しているので主に、利用者とのコミュニケーションに活用していると予想したがそうでもない。全体の22%程度にとどまる。また、営業活動に直結するプロジェクト(デザインコンペの案内)のプロモーションも7%でしかない。
ツイートのうち45%は、デザインサイトなどの他社サイトの紹介に費やしている。
ツイートをおっていくと、
・Inspiration: 50+ Vector-Based Book Covers - http://bit.ly/9ocTmL(http://vector.tutsplus.com/articles/inspiration-50-vector-based-book-covers/)
・40+ Awesome Grunge Style Photoshop Brush Packs - http://bit.ly/apPSnO(http://www.1stwebdesigner.com/freebies/awesome-grunge-style-photoshop-brush-packs/)

などといった、美しいロゴなどのデザインを紹介するページにアクセスできる。デザインだけでなく、秀逸なwordpressプラグインや新しいソーシャルメディアツールも紹介している。専門家がフィルタリングした情報だ。デザインに関心のある人であれば、このアカウントをフォローするメリットは大きいだろう。彼らのテーマがデザインであり、日々その調査を実践していることがよくわかる。紹介したサイトは、企業ブログ(http://blog.crowdspring.com/)でいつでもチェックできるように用意されている。同様にfacebookにもファンページも用意し、情報発信をしている。ファン数は1,844名。このように、デザインに関心のある人に向けて、積極的に貢献している。企業ブログには、デザイナー(creative)も頻繁に紹介され、彼らのブランディングにも貢献している。

ツイッター・アカウントを運営しているのはcrowdspringの共同創業者のrosskimbarovskyだ。彼自身もツイッターアカウント(@rosskimbarovsky:http://twitter.com/rosskimbarovsky)を持っている。follower数は2,800名程度、ツイート数は1万を超える。こちらも、積極的に活用している様子が伺える。同様にデザイン関係やcrowdspringのプロジェクトの紹介などが企業アカウントと重複してツイートされているが、自分の興味のある分野(Interested in crowdsourcing, startups, innovation, marketing, tech and law)についての内容が追加される。プライベートな「つぶやき」は殆ど、ない。個人ブログも用意されている。

【図】rosskimbarovskyのブログ
まず、個性的な風貌が目をひく。

【図】rosskimbarovskyのプロフィール

本人のインタビュー動画も多数掲載されている。創業・起業に強い関心を寄せていることがよくわかる。反面、デザインに関することはこちらには掲載していない。メディアの使い分けをしているようだ。ブログで取り上げるテーマの大半もそちらの内容だ。crowdspringにエントリーするデザイナーの大半は個人事業主か小規模な企業だ。そもそもcrowdspringを立ち上げたのも氏が企業のスタートアップに興味があるからだろう。何れにせよ、本人の専門性・考え方・喋り方の癖などが、日本にいても十分伝わってくる。crowdspringは企業及び個人の情報発信とコミュニケーションによって、クラウドソーシングを利用してデザインを提供するという事業に沿った、ユニークなエコシステムを構築している。

とりわけデザインを最たるものとして、人を売り物にするサービス産業では、定量的な実績や企業規模だけでは、評価はできない。企業側も顧客に関心を持ってもらうための「貢献」と、そこで働く人の「個性」を積極的に発信してゆくことが効果的だ。実績も歴史もないスタートアップ企業にとっては、なおさらだ。

現在、当社でも、Looops Trends(http://trends.looops.net/)というサイトを用意し、全社員が専門分野を自己宣言し情報発信をはじめている。是非利用していただきたい。

透明性を志向する政府〜日本:原口総務大臣が Ustream 会見を敢行! 米国:オバマ政権がソーシャルメディア・ポリシーをリリース!

4/9、原口一博総務大臣(http://www.haraguti.com/)は、Ustreamで会見した。これまでは、テレビや新聞のニュースを通じて知るしかできない大臣の会見だ。画期的だ。しかもリアルタイムに意見・質問もできる。その内容は、大臣にも視聴者にも画面上で共有される。会見では、郵政民営化や地域自治体をテーマに話をされたようだ。事前の告知は、約2時間前、大臣のツイッターアカウントからの図のツイートだけだった。

【図】Ustream会見の案内
ツイートにもあるように「テスト」であったので大々的な事前告知はなされなかったようだ。それにも関わらず1,200人もの人が会見を視聴したということだ。因みに、原口総務大臣ツイッターアカウント(http://twitter.com/kharaguchi)のフォロワー数は84,000人(2010/4/13現在)。ツイートを見逃した私は、残念ながらその歴史的配信を確認できなかった。後日のニュース記事でしか、その内容を知ることはできない。残念だ。残念なのは、私だけではない。総務省の広報室も同じ状況のようだ。事前の連絡は一切なかった。このため、国民から映像の発言を聞かれても答えることはおろか、発言があったかどうかを確認することすらできない。きっと担当者は今頃、大臣のアカウントをフォローして、タイムラインをこまめにチェックすることが業務に組み入れらたことだろう。大臣は、3月にも独断で「津波情報」をツイッターで配信して物議を醸した。「国民に大切な情報はなるべく早く伝えたい」「マスコミのフィルターなしに国民に意見を伝えたい」ということが大臣の思いだ。ソーシャルメディアの特徴として良く使われる「リアルタイム」と「透明性」だ。国民側からみても、政治を身近に感じることができたり、政治に参加する手段にもなる。管轄の総務省は、youtubeに「総務省チャネル」も開設している。

【図】総務省のチャンネル(youtube)
原口大臣や総務省以外でも、政府インターネットテレビ(http://nettv.gov-online.go.jp/)や衆議院審議中継(http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php)、参議院審議中継(http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php)など、政治活動を動画で配信するインターネット上のメディアは、ここ1〜2年で随分充実してきた。
ツイッターと政治(http://politter.com/)をチェックすると、4/13現在で登録されているツイッター議員(ツイッターを使用している政治家)は438人。2/2に「事件は現場でおきる〜キーマンは「コミュニティ・マネージャ」(http://japan.internet.com/column/webtech/20100202/8.html)」の稿で紹介したときは242人であったので、2ヶ月少々で、実に200人も増えている。すさまじい勢いだ。反面、テレビの政治討論番組での不用意な発言をしたり、ツイッターでも失言を発して、炎上を引き起こした政治家も少なくない。
政治活動にソーシャルメディアの活用が定着・拡大しつつあるなか、それを効果的に利用するため、また、国民・関係者が安心して交流できるためには、運用ルールを整備することが必要だ。

先週、米国政府に動きがあった。
4/7、ホワイトハウスは、ソーシャルメディア・ガイダンス(http://www.whitehouse.gov/omb/assets/inforeg/SocialMediaGuidance_04072010.pdf)をリリースした。部分的な内容だがソーシャルメディアに取り組む際の政府の方針(ソーシャルメディア・ポリシー)を表明した文書だ。

【図】ホワイトハウスソーシャルメディア・ガイダンス
本書は、OMB(アメリカの行政管理予算局。連邦政府予算の作成と管理,財政政策の立案,予算遂行上の諸調整などで大統領・各省庁に助言・勧告)が、政府関係者や監督官庁に向けたメモ」という形式で作成された資料には、ソーシャルメディアに政府関係者が関わる際のガイドラインを規定している。
冒頭では、大統領が就任時に「政府の透明性、国民が参加・協調できるシステム」を確立するメモを作成したことを紹介している。その志向に沿って、従来の条例で定められている「政府関係者・政府機関がソーシャルメディアを使用する前の承認手続き」を簡素化・廃止する条件等が記載されている。本件に関する掲示板サイトを読めば、「過去の法律を現在の技術に適用した場合の矛盾点を解消しているに過ぎない」という意見もある。しかし、この資料によって、実務担当者の裁量範囲が明確になる部分が広がる。部分的にせよ、ルールを策定してゆくことで、萎縮せずにソーシャルメディアに取り組める。

NECのソーシャルメディア・ポリシー

NECさんがソーシャルメディア・ポリシーを公開されました。

NECソーシャルメディア・ポリシー

このようにポリシーを公開すること自体、国内の大手企業では初めてのことではないでしょうか。画期的です。米国企業のケースを参考にされてまとめておられる様子が伺えますが、もうちょっとNEC独自の個性が表現されると、よりよいなあと個人的には思いました。
例えば、
ソーシャルメディア参加にあたっての心構え」良識ある一個人として 
の項目ですが、よく読めば、社員に宛てたメッセージであることが分かりますが、一般読者からするといきなり命令口調で唐突な印象をもちます。続く内容についても、

傾聴の姿勢を忘れないこと。まずはソーシャルメディアにおいてユーザの声を聞くこと。
ソーシャルメディアにおける情報発信や対応に責任をもち、誤解を与えないように注意すること。
経験を通じ、学ぶこと。また、その経験を広く社内外に共有し、多くの個人やコミュニティの成長に貢献すること。
ネットワーク上に一度公開した情報は、完全に削除できないことを理解すること。
日常の業務における責務を果たすこと。
とあります。内容はわかりますが、日本語的には、固い言い回しになっていますね。

と、小姑みたいな意見を述べてしまいましたが、ポリシーを実施されたこと自体、大変素晴らしことだと思います。NECさんがソーシャルメディアを積極的に取り組まれる決意表明でもありますね。

公式アカウントの一覧もあります。対応時間や投稿者の所属を明示しているところは、良いですね。

NECの公式アカウント一覧

見出しに"twitter"とありますから、これから続々と他メディアのアカウントも登録されてゆくと思われます。ちなみに、SAPのアカウント一覧(図)はかなり充実しています。

図 SAPのアカウント一覧
実際の使われ方を見てみましょう。
@NEC_ad
4/4開設で39ツイート、289フォローワー。今日時点では5営業日しか経過していません。ソーシャルメディア・ポリシーについての問合せも結構ありますね。注目の高さが伺えます。@返信も結構あり、交流を図られています。
@NEC_jp_event
最近のツイートはありませんが、イベントが有るタイミングでは、5名くらいの方がツイートを担当されているようです。@返信も結構有ります。

結局のところ、ソーシャルメディアを有効活用することが目的。ポリシーに沿った行動ができることが大切です。始まったばかりのNECの試みに注目したいと思います。

活発化してきた位置情報サービス〜Twitter の次はこのジャンル?【訂正】

4/6にinternet.comに掲載された「活発化してきた位置情報サービス〜Twitter の次はこのジャンル?」で紹介した携帯電話の位置情報取得方式の図について、読者の方から分類方法が不適切な旨、ご指摘を頂戴しました。以下のように差し替えをinternet.comに依頼中です。

変更したポイントは、以下です。
・取得手段の分類が明確でなかったので、2種類から3種類に変更しました。
auの「ezナビ」は位置情報サービスの総称であるので、使用をやめました。

まだ、キャリアによって開示している情報や表現に相違があるため、一部推定している部分もあります。お気づきの点があればご指摘いただければ幸いです。